2013年7月13日土曜日

佐藤正久「四海波高し このままで良いのか?日本の防衛」


去る5月6日、近所で開催されたヒゲの隊長の講演録。
実に1時間の大演説だったのですが、私自身も何度か涙しました。
一人でも多くの方と共有したい、そう思い講演を書き起こしました。
これを読んで頂ければ、隊長の人となりがわかると思います。
投票前の方はご参考にどうぞ、転載も大歓迎です。


「四海波高し このままで良いのか?日本の防衛」
2013年5月6日 さいたま市民会館
参議院議員・佐藤正久(ヒゲの隊長)


はじめに ~「ヒゲの隊長」は無効~
皆さん、こんにちは。
ただいま紹介いただきました、さいたま市の北区、上尾駅の近くに住んでおります参議院議員の佐藤正久です。


連休の最終日の今日、まさに行楽日和の中、防衛について、このように多くの同志の方々といろいろ考える機会を持てることを本当にうれしく思います。

 6年前、皆さまのおかげで参議院議員に当選させていただいたのですけれども、6年経った今でも、佐藤正久よりは「ヒゲの隊長」のほうが通りがいい。
ただ、「ヒゲの隊長」は選挙では無効票なのです。それは非常に苦労しておりまして、佐藤までは出てきても、正久まで分かる人間はほとんどいない。

ある支援者の方からは「正久を覚えてもらうために、ヒゲの隊長ではなく、正に久々にいい男と自分で言え」という声もいただきました。さすがにこれは自分で言えませんから、その辺でも非常に苦労しております。

 初の当選をいただいてから、先輩議員に「おまえ、顔がだんだんサダム・フセインに似てきたな」と言われたり、6年経つと今度は「『青葉城恋歌』のさとう宗幸さんの若いころに似てきたな」とか、いろいろいじられるものだなと思いますけれども、それでもやはりいただいた思いを1つでも2つでも結果としないといけない。
 そういう思いで、現場と国政の場を行ったり来たりという形で、この6年間、汗を流してきたつもりです。

 今日は波が高いという防衛について、「四海波高し このままで良いのか?日本の防衛」という演題を頂きました。これから皆さんと一緒にいろいろ考えていきたいと思います。どうかよろしくお願いします。


1.一番大事なのは国民の意識

 最初に、防衛について一番大事なのは国民の意識だと私は思っています。よく言われる言葉に、国民の防衛意識を超える防衛力はつくれない。今この青いバッジ、拉致も国民の拉致意識を超える拉致政策はできない。国民の領土意識を超える領土政策はつくれないと言われています。
 なぜか? 政治家、地方議員も、首長さん、国会議員も、国民から選ばれた人間です。国民の意識が低ければ、当然その代表もそれなりの人間が選ばれる可能性が高いと言われています。
 だけれども、我々政治家が国防は不十分だということを国民のせいには絶対にしてはいけない。説明し、説明し、説明しきらないと、と言っています。
 でも、その説明のやりとりが非常に足らないと、私は思っています。だから、今、私も可能な範囲で、政治家との会合をキャンセルしてでも、この6年間、ミニ集会、こういう講演の場、意見交換の場に多く出たつもりです。
 例えば非核三原則があります。実際は非核五原則です。三原則は核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず。でも、五原則は核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず、考えもせず、議論もせず。そうでしょう。

 皆さん、多くの方々は考えて議論した結果、三原則になっていますか。初めから考えずに、議論もせずに三原則でしょう。実際は2.5原則かもしれないし、二原則かもしれない。本当に日本の領海も核搭載の潜水艦は通っていない。誰が断言できるかという部分もありです。
 いろいろな面で議論していないのです。要は防衛も安全保障も、初めから考えないようにしているのです。
憲法の前文にはまさにその精神が書いてあります。日本は悪い国だ。日本以外はみんないい国だから、日本国民は諸国民の公正と信義、周りの国を信頼して我々の生存を確保しようと決意した。なぜ周りの国、北朝鮮、中国に我々の生存は認めないのか。初めからそういう発想なのです。考えなくなっている。安全保障はアメリカへ頼めばいい。自分で考えない。これでは意識というのは広がらないのです。
 日本は島国です。海に囲まれているというのは、防衛上、ものすごいメリットです。これが陸続きだったら大変です。「日本が海に囲まれているというのは、兵隊さんが50万人いるのと同じだよ」と言う軍事評論家がいました。でも、だんだん海が陸地化しています。要は向こうの装備が、射程が伸びてきた、精度がよくなった。海の向こうからでもミサイルが届いてしまう。そういうふうになっています。状況はどんどん変わる。今までと同じような発想では守れません。
 本当に国を守ろうと思った皆さんは考えます。家をとっても、日本人はもともとすばらしい文化を持っていますから、鍵もかけないのは当たり前です。皆さんも隣の家は知らないけれども、自分の家は絶対泥棒に入られないと思っているでしょう。そういう人が多いのです。日本人は防犯意識がものすごく甘いんです。これも防犯意識を超える防犯政策もできないと言われるように、非常に低い。

 その典型例を今から言います。日本のトップ、総理大臣。有名な方を順に挙げます。



鳩山(由紀夫)元首相。有名です。普天間問題がありました。普天間を当てもなく県外だ、国外だと言った人です。
 普天間基地というのは、軍事基地です。ヘリコプター部隊がいます。海兵隊のヘリコプター部隊が飛んでいくときは、運ぶ人と運ぶ物と、位置確認をして、それを積んでいかないと意味がないでしょう。空身で行っても何の意味もありません。海兵隊は24時間365日、約2,300名が沖縄近辺で待機していて、何かあったら、朝鮮半島、台湾のほうに行く。沖縄は台湾、あるいは北朝鮮から、ちょうどいい距離にあります。
地図を見てください。これが沖縄です。沖縄から台湾海峡、朝鮮半島に近すぎず、遠すぎず。近くにいたら、すぐ自分の来たのがばれてしまいます。そういう場所にいます。ヘリコプターの一部は24時間365日待機しています。
 その基地を2,300キロ離れたグアムに持っていくということは、皆さんがこの埼玉浦和に住んでいて、駐車場の車を福岡に置くのと一緒です。すぐ動けないでしょう。
こんなばかみたいな議論をまじめに国会でやったのです。周りの国はみんなびっくりしていました。


 次に有名な菅(直人)元首相。




有名ですよね。当時の石破(茂)政調会長から「早く陸海空自衛隊のトップの方と面談してください」と国会で要望されて「分かりました」と面談したのですが、その中で何と言ったか。
「いやあ、よくよく予習をしてみたら、自分が自衛隊の最高指揮官というのが分かりました」。
こんなの、アメリカで言ったら即刻クビでしょう。でも、それが我々の総理大臣なのです。総理大臣は与党も野党も関係ないのです。


 次に有名な野田(佳彦)前首相。彼は陸上自衛官のせがれです。
お父さまは定年まで自衛隊を勤め上げた方です。




 彼が一番最初に任命した防衛大臣は一川(保夫・参議院議員)さんでした。
農業の専門家で、安全保障はあまりやったことがない。
だから、着任のときに「私は安全保障の素人です。
素人がやるのが本当の意味での文民統制です」と言って更迭になりました。

(文民統制?一川保夫・防衛大臣)


 野田前総理が次に任命したのは、今度は田中真紀子(元・文部科学大臣)さんの旦那さんの田中直紀(参議院議員)さんです。
素人からど素人に変わりました。

(田中「もしもし、もしもし!」直紀防衛大臣)


 すごいのですよ。去年の4月に、北朝鮮からミサイルが発射されるという話がありました。みんな態勢を取っていました。展開をします。委員会で、いろいろな方が質問しました。質問しようとしたら、あれ? 答弁席にいないのです。民主党の予算委員長もびっくりして、委員会はストップ。
みんなで探したら、食堂でコーヒーを飲んでいました。
注意をされたら
「すみません。二度とコーヒーは飲みません」
そういう問題じゃないのです。防衛大臣なのですから。
 予算委員会はテレビが入るときと、入らないときがあるのです。入らないときが圧倒的に多い。本当に入らなくてよかったなと思っています。
あのとき、北朝鮮の東倉里(トンチャンリ)という発射場所からフィリピンの東沖のほうに落とすと発表したのです。発射場所と落下地点が分かれば、それを結べばどこの上を飛ぶかも分かりますよね。日本のある島の上を飛ぶことが分かった。それは沖縄県の多良間島の上を通過する。




よせばいいのに、田中大臣は自衛隊の展開状況を発表したのです。多良間島に陸上自衛官4人、それから、約150キロ西の石垣島にPAC3というミサイル付きで約600人。でも、そのミサイルは射程が二十数キロですから、150キロ離れた多良間島には届かない。多良間島は110キロ東の、今度は宮古島、これをPAC3というミサイル付きで約350名。

 何か変でしょう。真下に4人。離れたところにいっぱい置いているのです。でも、発表したから、説明責任があります。
「大臣、何で真下の多良間島は4人なんですか」と聞いたら
「人口が少ないからです」と言ったのです。
「えー!」と。民主党の委員長もびっくりして、委員会はストップです。
委員長から「大臣、落ち着いて、冷静に答えてください」
「すみません、間違えました。多良間島の自衛隊4人を5人にします」
そういう問題じゃない。午前中の審議はストップです。これは本当の話です。
 これでは守れないのです。これは、受けるほうも受けるほうだけれども、任命するほうも任命するほうです。そうでしょう。野田さんは国防を軽視している。外務大臣とか財務大臣はそれなりにつけたつもりだった。でも、何で、よりによって防衛大臣が田中さんなのか。ほかにいるだろうと民主党の人も言っていました。要は野田さんの頭の中に、自衛官が何とかしっかりやれば何とか持つのではないかという甘えがあったのです。でも、それはみんな国民意識の反映なのです。ずっと考えもせず、議論もせず来たのです。


2.領土問題と、リーダーに求められる覚悟

 領土問題もそうです。2年前、日本青年会議所、JCが日本の高校生400名に「北方領土、尖閣、竹島、ちゃんと分かりますか」とアンケートをとりました。正解は400名中たった7名です。2年前の日本です。「何で」と聞いたら「だって、学校で習っていない」。つまり教育の話なのです。
 そのとおりなのです。私も習っていません。私の社会科の先生は完璧に「レフトスタンド」の人でした。だから、縄文土器とか弥生土器はめちゃくちゃ詳しく教えるのです。小学生でも明治維新までいかないのです。昭和史を教えたくないのか、教えられないのか。

だから、領土問題も、自衛隊も、先ほど言った慰安婦のことも、昭和史を習っていなかったら、分からないでしょう。だから、いくら教科書をいい教科書に変えるだけではだめなのです。ここは本当に政治も、地方議員も連携して、しっかり先生が教えるようにしてもらわないといけない。
 
 教育指導要領もそういう部分で、やはりしっかり書かないと。指導要領にも、昔は昭和史のことを詳しく書いているのです。だから、政治の責任です。
 近現代史が分からなかったら、周辺国と対峙するのは難しいです。
 4年前に、こういう話がありました。国会議員の中で尖閣について話しをしていましたら、私の隣のある国会議員が何かずれているのです。「先生、尖閣諸島、何県にあるか分かって、ちゃんと喋ってますか」と聞きました。「佐藤さん、福岡県でしょう」「違います。あれは沖縄ですよ」「あ、ごめん。対馬と勘違いしていた」「先生、対馬は長崎県ですけど」。本当の話です。国会議員です。こんなものなのです。

 2年半前、尖閣の沖で、海上保安庁の巡視船が中国の漁船にぶつけられたでしょう。皆さんはビデオをごらんになりましたか。あんなビデオは初めから見せればいいでしょう。見せなかったのです。あのとき、中国が日本に謝罪と賠償を求めたから、一色(正春・元海上保安官)さんが耐えられなくなって出してしまった。そもそもビデオというのは隠せば隠すほど見たくなるものなのですから、あんなのは見せればいいのです。



 あのときに乗組員を帰し、船を返して、船長を帰した。そういうことをしてはだめ、ちゃんとやってください。尖閣諸島は石垣に属しているのです。石垣の中山(義隆)市長や市議会議員の方がみんなで陳情に来られました。私のところにも来ました。
中山市長は、当時与党の民主党の田中真紀子さんのところにも行ったのです。「いや、中山市長、わざわざ島根県から、ご苦労さま」と言われたのです。みんな嘆いていました。竹島と尖閣を勘違いしているのです。

 田中真紀子さんは自民党時代にどこかの大臣をやっていますよね。外務大臣です。外務大臣が領土、竹島と尖閣を分からなくて解決できますか。我々政治も反省しないといけない。でも、やはり国民という部分も、もっともっと教えて、国民の意識を上げる、これも政治の仕事なのです。政治というのは、国会議員だけではなくて、地方議員の方、みんなでこれをやらないと、本当にこの国難、当たり前のことが当たり前ではなくなっているこの時代に、これが保てなくなってしまう。私はそういう危機感をすごく持っています。

 拉致もそうです。防衛だってそうです。もう考えないのですから。防災もそうです。先ほど堤防の話がありました。考えなくなっています。
 私はイラクへ行きました。隊長でした。とりあえず行ってこい。ある人は史上最大のいい加減な作戦と言っています。私ではないです、ある人が言ったのです。


 なぜか? 当時、我々は先遣隊で行きました。先遣隊の派遣です。本隊の派遣は決まっていませんでした。本隊は先遣隊が行って、先遣隊が上げてきた情報によって、出すか、出さないか判断する。そんなばかな話はないでしょう。
 では、先遣隊って何なの? とりあえず行け。奥(克彦)大使、井ノ上(正盛)一等書記官が亡くなったものだから、ほとんど調査ができていない。だから、とりあえず先遣隊が飛び込めという話です。

 そのとき、一番何を考えたか。みんなリーダーの背中を見ています。不安だから、みんな見るのです。リーダーの背中、リーダーの覚悟をみんな見ています。何としても情報を上げると同時に隊員を守らないと。もう考えます。考えて、考えて、考えて……これ以上、考えられないほど考える。みんなで考えました。命が亡くなったら大変です。もうほとんど情報がない中を行く。だって、みんな同じ顔に見えるのですから。あれほど訓練した自衛隊も怖い。

 みんな同じ、顔を見る。誰が敵か、誰が見方か分からないのです。テロとかゲリラは、皆さんのような一般市民が一瞬にして変わるのです。初めから軍服を着て、鉄砲を担いでいる人間は誰もいません。米軍が、子どもが来る。「おっちゃん、どこ行くの?」「どこどこへ行くんだよ」と言ったら終わりです。行った先で、女性が出てきて、おなかに爆弾を巻いて、ダーン! そこで敬礼なんかしたら終わりです。敬礼をしたら、誰が上官か分かるでしょう。
皆さんがスナイパー、狙撃手だったら誰を狙いますか。下端を狙いますか。上を狙いますか。上官です。それで、スナイパーで結構やられています。700メートル先から顔と首をやります。だから、いろいろなことを考えて備えないといけない。そこまで考えないといけないのです。本当にそのくらいの覚悟があれば、みんなそれなりに背中を見ています、何をやらないといけないと、考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて、もうこれ以上ないというところまで考えて深掘りします。


3.守る覚悟

 そういう面で一番の軸、覚悟という部分は、やはりどうしても、自分の国は自分で守り、自分たちの地域、ふるさとは、みんなで頭を使い、守り、幸せにする、自分の家族を守り、本当に幸せにするという当たり前の軸の憲法に変えて、その精神を、その具体策を各法律、政令、政策に落とし込まないといけない。その根本の軸が憲法に書いていないのです。だから、日本は悪い国だ。日本以外はみんないい国だから、周りの国にお願いしましょう、アメリカへお願いしましょうという発想があるから、国連憲章に基づいた自衛権も書いていない。自衛権も書いていないから、当然、自衛隊も書いていない。
 憲法10条から40条を見ると、国民の権利、義務が書いてあります。国民の権利、15書いてあります。国民の義務はたった3つです。バランスが悪くないですか。義務が3つで権利が15です。自由は6カ所書いてあります。責任はたった1カ所です。これはバランスが悪い。

憲法というのは、英語で”Constitution”といいます。構造、国の構造、国の柄です。国の柄がこんな権利と自由が前面に出ている。おかしいでしょう。我々のもともと持っている価値観というのは義務なき権利はない、責任なき自由はない、そういう主義でした。違いますか。

 権利とか自由が前面に出すぎて、義務と責任、自分の国は自分で守る、自分の地域、家族、この当たり前の軸がなくなってしまっている。みんな自分の責任を放棄するようなことになってしまう。だから、私は、価値観をだめにするような、そういう政策は本当に大反対です。外国人への地方参政権も当然反対です。子ども手当ても大反対です。なぜかというと、お金持ちも、そうでもない人もみんなにばらまく。我々の価値観からいって、これはやはりおかしいです。頑張った人が頑張った分が報われる。それでもだめな人に、必要な人にあげる。これは分かります。初めから、それをばらまく。これは日本の自分の義務と責任をおかしくしてしまう。

 4年前、福岡で、ある中学3年生の男の子と、子ども手当てについて話したことがあります。「子ども手当てをどう思う?」「佐藤さん、僕、反対だ!」。立派だなと思いました。「何で反対なの」と聞いたら「だって、佐藤さん、あの子ども手当ては、お父さん、お母さんに行って、僕に来ない。赤字国債を発行して。付け払いでしょう。将来、みんな僕に来るんでしょ」。よく分かっています。「ということは、この子ども手当ては財政的な児童虐待だ!」「君、政治家になったほうがいい」と言いました。

 でも、冷静に考えると、自分に来ないから反対しているだけなのです。今から、子どもは自分さえよければいい、今さえよければいい。俺、俺、物、物、金、金になったら、最後はどうなってしまいますか。もう無理です。そういう当たり前の基本をいろいろな面で教え込まないといけない。義務と責任は権利と自由と一緒にあるのです。

 私は最後の自衛隊の連隊長を京都でさせていただきました。当時からずっと、今でもお世話になっているのは裏千家の、お茶の大僧正、90歳の千玄室さんです。海軍特攻隊の生き残りです。彼が言われているのは、昔の日本人は「~の」の文化だった。今の日本人は「~と」の文化になった。昔は日本国の県民であり、埼玉県の県民だった。今は日本国と国民、埼玉県と県民。対立関係なのです。昔は「~の」だったから、帰属意識があって、自分は国や県のために何をやろうという発想がまだあった。ところが、今は逆で、「~と」だから対立関係です。国や県は俺に何をやってくれるのだ、こう最初に来てしまう。これでは守るべきものを守れない。

 仮に、政治家とか行政の方、自衛隊、警察、消防、海上保安庁が、権利とか自由を前面に出して、義務と責任をへこませたら、どうなってしまいますか。終わりでしょう。


4.被災地で触れた、日本人の矜持

 震災ひとつとってもそうです。宮城県に多賀城市があります。多賀城駐屯地。両方とも大きな被害が出ました。波をかぶりました。多賀城駐屯の隊員も1名命を落としました。駐屯地の隊員900名が救った命は4,775名。自衛隊、警察、消防、海上保安庁全部で救った命が2万7,000名です。つまり、たった900名が全体の5分の1弱の命を救いました。

でも、彼らは自分の家に帰って、家が大丈夫か、奥さん、子どもは大丈夫かと確認できたのは、震災が起きてから5日目以降です。最初の3日間、人命救助に大事な72時間、生存率が下がる72時間は国友連隊長の命令で、家族よりも被災者優先。携帯電話をかけてもつながらないという中で、結果を出していただきました。


  5日目以降に交代で家に帰って、家を見たら、家がなかった隊員もいます。身内が亡くなった隊員もいます。それは後で分かること。最初の3日間は、俺たちしかいない。今、頑張んないで、いつ頑張るのだ。まさに被災地のど真ん中の部隊の意地と誇り、義務と責任です。俺たちしかいない。覚悟があれば、義務と責任が深掘りできるのです。


 宮城県の南三陸町の遠藤さんという女性職員。婚約もされていました。最後まで無線を握りしめて避難を呼びかけていた。自己犠牲です。1人でも多くの人に助かってほしい。でも、もう自分はもうだめだ。分かっていてもやる。この覚悟です。



5.何が、誰が問題をここまでさせたのか

 領土問題がここまでぐちゃぐちゃになったのは、鳩山さん、野田さん以上に菅直人・元首相に責任があると私は思っています。


 先ほど言いましたように、乗組員を帰し、船を返して、そして、最後は船長を帰しました。そのときに彼が言った言葉は周りの国もみんなびっくりしました。彼は何と言ったか。「俺は知らない」「俺が決めたんじゃない」「あれは那覇の地方警察が決めたんだ」。また責任逃れです。

福島の原発も同じです。「俺は悪くない」「俺は悪くない」。主権や領土に係る事項について、国のリーダーが「俺は知らない」。周りの国はびっくりしました。日本はいつからこういう国になってしまったの。彼らが持っている日本のリーダーのイメージと全く違うでしょ。本当、第二次世界大戦のあの先人たち、英霊たちの思いと全く違う。

「俺は知らない」。
あれからです、周りの国、日本をずっと見ていました。

帰したら、今度は仙谷官房長官が何と言ったか。
「やっとうまくいく」。





 ところが、向こうは何と言ったか。全く逆でした。
 主権というのは、お互い、ぶつかったら平行線がほとんどです。自分が悪くもないのに頭を下げたら、向こうは出てくる。
当たり前でしょう。帰してしまったものだから、自分で船に穴を開けて、写真を見せて「ぶつけてきたのは日本だ。悪いのは日本だから、日本に謝罪と賠償を求める」と言ってきました。
フジタの社員を人質にとり、日本へ、レアアースを含めて、いろいろなものを、経済制裁を始めました。さらに高いボールを投げてきました。
「いや、想定外だ」。こんなことは想定外でも何でもない。





  ロシアの大統領がその右往左往を見ていて、それから1カ月半後の11月に国後島に上陸しました。チャンスですから。当たり前です。ロシアの閣僚級がどんどん北方領土に上陸をしました。
その後、韓国の閣僚がどんどん竹島に上陸しました。見過ごせない。だから我々は、新藤(義孝)先生、稲田(朋美)先生、そして佐藤は鬱陵島に向かおうとしたのです。


 韓国は、しまいには大統領まで上陸。中国の船はどんどん来る。日本のリーダーの覚悟を見ているのです。


6.リーダーは、政治は「結果」が全て

 全く逆だったのは、イギリスのサッチャー首相です。フォークランド諸島とイギリス本土はどのくらい離れているか分かりますか。1万3,000キロも離れているのです。
イギリス国内でいろいろな意見があった中で、サッチャー首相は決断しました。
閣議でずっと見渡して、机をバンとたたいて

「この中に男はいないのか!
領土というのは人命を賭しても絶対に守り抜かないといけない。
なぜならば、領土は国家そのものだ。
領土なくして、国民の生命も財産も担保たり得ない。
行け!」。

見事でしょう。これがリーダーです。そして、結果を出した。その覚悟が今、我々に求められています。

 6年前の参議院選挙のときの総理大臣は安倍(晋三)さんでした。今年も同じく安倍総理の下で闘います。でも、6年前の安倍総理と今の安倍総理は違うなと思います。何が違うか。肚(はら)、そして胆力。1回挫折を経験して這い上がった男はやはり違うなと、近くにいて感じます。やはり失うものはありません。ぶれない強さがあります。今、とりあえず結果を出せ。結果を出して、自分の責任を含めて、自民党が、政治が失った信頼を取り戻せ。結果だ!
 私も自衛官時代、上司から「結果を出せ。結果を出すために、まず汗を出せ。汗が出ない人間は知恵を出せ。汗も知恵も出ない人間は辞表を出せ」とよく言われました。でも、そのぐらいの覚悟が今、我々に大事なのです。政権に戻ることが自民党の目的であっては絶対にいけません。そうでしょう、皆さん。

 政権に戻って、いかに日本を取り戻すか。それだけでは不十分です。日本を強く、豊かにして、すばらしい伝統、文化、価値観を持った日本を、世界のど真ん中で花を咲かせる、そのくらいの覚悟が必要なのです。

 そのために、まずは取り戻す。そこで止まってはだめなのです。さらに、我々は日本国はすばらしい伝統文化を持っている。それは価値観になっています。それをやはり多くの国に広めるくらいの覚悟がなければ無理なのです。
 特にそういうのは東北の復興、景気、経済、危機管理。景気、経済、最初のころはいろいろ言われました。金融緩和、ちょっとやり過ぎだ。日本銀行を脅していいのかと言われました。でも、総理はぶれませんでした。そのとおり、日銀総裁を白(=白川方明・第30代総裁)から黒(=黒田東彦・第31第総裁)に変えました。
 しっかり転換なさったでしょう。

 危機管理もそうです。1月30日に、中国の軍艦が海上自衛隊の防衛艦にレーダーを照射しました。射撃用のレーダーです。それを2月5日、1週間かけて証拠を固めてから発表しました。「発表しろ」と命じたのは防衛大臣ではなくて安倍総理です。「これはいけないことだ。悪いことだから、しっかりと証拠を固めて発表しなさい」。2月5日に発表しました。

 びっくりしたのは中国です。まさか発表すると思わなかった。前の政権とは違う。だから、軍部のほうからは何も外務省に連絡はない。テレビカメラの前でも外務省の報道官は右往左往。何も聞いていないから、記者から「外務省は何も知らなくていいのですか」と質問をされて「そう取られても結構です」。


苦しい。ところが、2日後「あれは日本が間違えた。我々のレーダーというのは、射撃管制用のレーダーではなくて、監視用の捜索レーダーだ」と、うそをつきました。捜索用のレーザーはぐるぐる回るでしょう。射撃用の管制レーダーはロックをするから、ずっと当てているのです。だから、捜索用のレーダーを見たら一目瞭然です。何秒かに1回しかこちらに来ません。こんなはずはない。

 安倍総理はさすがです。行為ではなくて「謝罪を求める」と高いボールを投げました。そうしたら、中国は苦しくなって「いやいや、そもそもあの日本発表はねつ造だ」。もう三転四転。こんな中国は見たことがない。こういうふうに、ぶれない強さがあります。

結果を出していくということが、本当に大事だと思っています。




 そういう意味で、我々は今、与党になって、まさにこれからが正念場だと思います。いろいろなことがあるでしょう。でも、それをいかに我々が一致団結して覚悟を持ってやっていくか。それが今、求められています。
 そういう面では、この憲法96条を通じて各章について議論をしていく。当然、9条が一番の焦点になるでしょうけれども、どんどん議論していく。
 でも、皆さん勘違いしないでください。憲法を変えたから全部よくなる。これはありません。憲法はあくまでも我々の基本、国柄を決める。さらに我々の思いを伝えるためには法律をしっかりつくり、政令、政策、制度まで落とし込まないと。それまで我々の闘いは終わらないのです。そこまでやるのは同志の皆さんと我々の思いです。


7.いま、そこにある危機

 では、これから若干各論に入ります。今日は時間の関係でミサイル、原発、尖閣の3つに絞って話します。

 原子力発電所

 北朝鮮から韓国に脱北した元殊部隊の方が日本に来て、1週間歩きました。もしも攻撃するなら、どこを攻撃すると聞いて言ったものの1つ。全部は言えませんけれども、ある1カ所が大手町の地下鉄を狙う。大手町は乗り換えがいっぱいあるので、すごく便利なのです。便利ということは、逆に弱いのです。あれだけ人が乗り降りするのに対して、あの駅員の数は少なすぎる。そういう発想は、今の日本にはないでしょう。

 これから防衛計画大綱をやりますけれども、北朝鮮の脅威を意識した場合、ミサイルと特殊部隊は絶対に考えないといけません。今、日本で狙われて一番弱い場所はどこか? 今一番弱いところはどこだと思いますか。



(会場から「原発」の声)
そうです。残念ながら原発です。とりわけ福島第一原発。私の地元です。これが一番弱いのです。ただ、皆さん方は原発に行けるのですよ。今20キロぐらい出ていきなさいと言いました。でも、警察が20キロ全部いるか? いないです。主要な経路にしかいません。あとは柵を置いている。どこからでも入っていけます。車がいっぱい転がっています。
ある技術を持っていたら、車は簡単に動かせます。だから、誰でもすぐそばまで行けます。

 1年間放ってあって、周りは草ぼうぼうです。海のそばは日中は海から風が吹く、夜は山側から山風が来る。風が強いときに山のほうから火をつけたら、大規模火災があってもおかしくない。だから、草を刈れと言います。けれど、そういう発想がない。
 しかも、向こうの現場責任者に「今、何が一番怖いですか」と聞いたら「冷却水が回らなくなることです」と。

 では、回らなくするには、どうすればいいか。それは、取水口を止めるか、電源を止めるか、その水を回すポンプを止めるか、3つありました。どこかをやればいい。そんなのはちょっと知恵があれば誰でもできます。詳しくは言えませんけれども、ネズミが断線を招いた事からも分かるように、ポンプなんかものすごくいい加減な状態です。電源だって、2グループで電源車をやれ。簡単にやれます。ポンプをやれ。簡単にやれます。1号機から3号機のポンプは一遍にダウンできます。

 鉄塔があります。鉄塔は皆さんでも倒せます。鉄塔はボルトを外したら取れるのです。当たり前です。香川県で97~98年にありました。鉄塔がいたずらで倒されました。
 考えたらいくらでもあります。そういう現場に対しては、警察だけではなく、自衛隊が出る番なんです。だって、もうみんなばれてしまったのですから。水が1日回らなかったら爆発すると分かってしまったのです。

 前の東電の清水(正孝)社長に言いに行きました。
「しゃべりすぎです。何で、あんなに原子炉の中の構造をべらべらしゃべるんですか」
「それは官邸から発表しろと言われている。情報開示だ」と。
ばかじゃないか。一番喜んだのはテロリストです。あんな原発の情報なんか入りません。構造が全部ばれてしまった。普通、あり得ません。

 だから、私は真剣に、今回、自衛隊の出番だと考えています。
でも、これは自衛隊と警察はなかなか入れないのです。警備は警察の仕事と、縄張りがものすごい。でも、現場の警察官で自衛隊に来てほしいと思っている人はいっぱいいるのです。でも、上のほうがものすごい縄張り意識があってだめなのです。

 9.11の後、そういう警護指導をいろいろ議論しました。当時、防衛庁は力がないときで、テロに対して、自衛隊が警備できるのは自衛隊施設と米軍施設の中だけ。原発は警察。あんなちょっとした機関銃だけでは無理です。

 ミサイル

 もう1つはミサイル防衛です。北朝鮮のミサイル、やはり半端じゃないです。どんどんレベルが上がっています。昔は、この本州を通過して太平洋に落としていました。今はフィリピンのほう、南のほうに向いています。昔は、何で東だったか? 地球は自転します。自転するので、東のほうに撃ったほうが衛星を軌道に乗せやすいのです。南のほうに向けると非常に難しい。だけど、最近は観測衛星の性能も上がり、だんだん精度が上がってきている。

 この前の12月、北朝鮮はものの見事に1段目、2段目をここに落として、あるものを軌道に乗せました。ものすごい技術です。ちゃんと指定した海域に1段目、2段目を落としていく。何でフィリピン沖にしたか? これはグアムを意識しているのです。ここに落とすということは、いつでもグアムまで行けるよという意思表示です。実際に射程は1万キロまで届くという能力まで、もう開発が進みました。半端じゃない、彼らの覚悟です。


 核ミサイルを持てば、絶対アメリカに攻撃されないと分かっているのです。逆に核ミサイルを持っていなかった国がアメリカに攻撃されています。だから、みんな必死になって、国民を犠牲にしても核とミサイルは何としてもやる。これが北朝鮮です。

 中国は絶対に北朝鮮を見捨てないと、北朝鮮は分かっていますから、そういう上でやっています。だから、朝鮮戦争のときも、ソ連がギブアップして、その後、中国が入ってきました。中国にとっては北朝鮮はものすごく大事な場所なのです。

北朝鮮の北部までアメリカ軍が来たら、首都の北京までたった700キロしかない。700キロ先に米軍が来る。中国にとっては首都がいつも脅かされますから、これは絶対に耐えられません。だから、絶対、北朝鮮は中国は見捨てないと分かっています。それで、だだをこねている。
今、アメリカが意識しているのは中国です。だって、あれだけお金をかけて空母をこちらに展開させる、あるいはステルスの戦闘機や爆撃機を、わざわざここに持ってくる。こんなのは北朝鮮にまだやる気がありません。みんな中国です。中国、分かっているな。ちゃんと北朝鮮を抑えろよ。この意思表示です。そういうことをいろいろやっているのです。

 そういう中でも、ミサイルは彼らは間違いなく開発しようとしています。だから、真剣に、我々はミサイル防衛はもっとやらないといけないと思っています。今回の防衛計画大綱(中期)でも、私は、原発の問題とミサイル防衛というのはもっと真剣にやらないと守れない。百発百中というのは絶対にありません。百発百中はない。しかも、いろいろなものがあっても、向こうが何発も撃ってきたら、それは弾が何発もそこに行かなければ100%はない。だから、もしも落ちたときの対応はあまり考えていないのです。

 形だけ紙の上ではさいたま市の国民保護計画をやっていますけれども、ミサイルが落ちたときの訓練はなっていません。実際に、ミサイルが落ちたときは、一番最初には、自衛隊では大宮にあるような化学部隊が出動します。なぜか? 弾頭が何か分からない。通常弾頭なのか、核弾頭なのか、あるいは化学弾頭なのか、生物弾頭なのか。

だから、ああいう諜報網というのは空気マスクを背負って行って、それを特定しないといけない。だから、絶対、皆さん、風下のほうに行ってはだめです。何か落ちたときは風上です。放射能と一緒です。そういう落ちた場合の訓練はまともにやっていないのです。福島のように風下に逃げるのは絶対にだめです。そういうことをまともにやらないといけない。ここは国民の意識です。だから、自分の上には、絶対落ちないとみんな思っているのです。保証はない。そういう部分もあります。

尖閣


 もう1つの焦点は尖閣です。尖閣については真剣にやらないといけません。日本の漁師さんの数は約20万人です。中国の漁師は5年前で800万人いました。漁師だけで埼玉県民より多いのです。今はもう1,000万超えているといいます。
なぜか?どんどん裕福になって、内陸のほうまで魚を食べているのです。13億の人間が魚を食べる。半端じゃないでしょう。
 これも「覚悟」なんです。1億2,000万のリーダーと13億のリーダー、この覚悟ははんぱじゃないです。皆さん、13億のリーダーになったことを考えてください。13億人の胃袋を満足させる。これは半端じゃないです。胃袋を満足させないときに、だいたい暴動が起きて、政権が倒されるのです。だから、魚、どんどん獲るに決まっています。国際ルール、そんなの関係ない。どんどん取ります。だから、ソマリア沖の海賊が増えた1つの原因に中国のトロール漁船があります。全部取ってしまう。半端じゃないと言われています。

 アフリカのエチオピアの首都アディス・アベバへ行くと、アフリカ連合の大きな建物が建っています。国連の建物より立派です。それは中国が全部ただで建てたのです。アフリカの主要な国の国防省とか外務省はみんな中国がただで。その代わり農業資源、いろいろな資源を全部独り占め。半端じゃないです。尖閣もそういう延長線できます。第二次世界大戦が終わってから今までずっと西と北には行けたのです。それがチベットであり、ウイグルあり、内蒙古、これは陸続きなのです。ところが、海軍力がついてきたから、今度は東と南です。そこにどんどん来ているのです。そういう状況だったのです。


8.四方、波高し

 この波はどんどん高くなる。だから、我々は、これからは想定外ということを言わずに、どんどん準備しないといけないのです。
 今、尖閣諸島、魚釣島で何かあったら、那覇から戦闘機でスクランブルで飛んでいきます。何キロ離れていると思いますか。420キロ離れています。この浦和から直線距離で神戸ぐらいです。それが一番近い航空自衛隊の拠点です。行くまでに30分弱かかります。
だから、仮定の話ですけれども、そこで本当に何かあったとき、飛行機がもう2機編隊で、一度グループなど来たら大変です。一度、グループに対処しないといけない。みんな那覇から行く。途中で、もう十数機がなくなってしまう。そのくらい飛びます。
 では、尖閣に一番近い海上自衛隊の基地はどこか分かりますか。佐世保です。佐世保から1,100キロあります。ここから種子島までです。そうだと、やはり近くに拠点をつくらなければいけないのは当たり前でしょう。

 要は警戒、監視だけでも大事です。だけど、いざというのは、現場に行ったら戦えるというのが一番の抑止力です。そこまで考えて準備しないといけないのです。
 尖閣諸島もそうなのです。尖閣諸島5島あります。端から端まで110キロあります。ここから静岡ぐらいです。だから、そこに、向こうが分かれてバンバン入ってきたら、対応する海上保安庁は大変です。尖閣諸島を守るには110キロというのはすごく遠いのです。
 そういうふうに、これからのいろいろなことを考えるとき、我々はそういう現実に即して議論しないといけません。当然、向こうの避難港をつくるのも大事。でも、避難港だけつくって、それを排他する力がなかったら、中国は居座ります。時化(しけ)があったら、避難は断われないのです。

 五島列島の福江港などは時化があったら、いつも中国漁船が東側に来ます。でも、それは受け入れざるを得ない。怖くて、夜通し監視しています。波が引けたら、今度は魚を取って帰ります。とんでもない。だから、避難港をつくるのであれば、それを排する力と一緒でないと無理です。


 尖閣については、本当に習近平さんが腹をくくって「漁船行け!」と言ったら、漁民は1,000万人以上いるのですから1,000隻の漁船なんか簡単です。本当に、三国志の赤壁の戦いのような状況が起きてもおかしくない。いろいろなことを想定しなければいけない。

 陸海空自衛隊の連携も強化しないといけませんし、警察と海上保安庁の連携もしないといけない。海上保安庁と自衛隊、自衛隊と警察の連携も必要です。特に警察官というのは自活能力がないのです。この前の震災のときも、自衛隊はテント生活をしていました。警察の方は旅館か体育館です。魚釣島に1週間キャンプできません。
だから、前回、魚釣島に警察が行ったときは、近くの海上自衛隊の船にいて、そこから上陸しました。そういうホテル代わりの船がなければ絶対に無理です。陸上の警察に対して、海から海上保安庁、自衛隊がどうやって支援するかということも考えなければいけない。いろいろなことを考えないと、守れない。

 それには、最終的には、やはりリーダーの覚悟です。何としても守るという覚悟です。私は当面作戦、将来作戦と分けて考えます。当面作戦、将来作戦。今いきなりボンと自衛隊を置いたら、これはあまりいいことはないでしょう。だって、仮に自衛隊を置いたとしても撃つ弾がなかったら単なる鉄の塊でしょう。それでも、置いたら置いたで、向こうにはいい口実になるかもしれない。いろいろあります。
 では、もしも自衛隊を置いたら、経済的な嫌がらせがいっぱい来ます。そういう備えもやっていろいろ準備しないといけない。私は、将来的には、何らかの管理強化は大賛成です。だけど、そこはうまくやらないといけない。将来的は、私は絶対に管理強化、人を置くべきだと考えます。

 なぜか? 中国とソ連の紛争がありました。アムール川の支流のところにダマンスキー島、珍宝島という島があります。その島をめぐって中国とソ連、100万以上の軍隊が向き合いました。それは1969年、中国が武装した偽装難民を島に送り込んで、その農民を保護するという目的で軍隊を派遣して、にらみ合いました。
でも、中国が島を取りきったのは22年後の1991年です。ずっと待機したまま、農民をどんどん島に送り込んで、91年、ソ連が崩壊した年に、鄧小平が全部取りきりました。ずっと棚上げというのは向こうの思うつぼかもしれません。日本が弱くなったときに出てきますから。これが向こうです。
 だから、そういう面で、我々が本当に覚悟を持って、この領土、尖閣、あるいは原発を守っていかないと。今、そこの脆弱性が割れてしまった分については、本当にしっかり守っていかないといけないということです。


9.日本人の「覚悟」

 何で、私がここまで覚悟、覚悟、覚悟と言うかというと、日本人はすばらしい民族で、いざというときに覚悟が出るのです。
震災のときに、東北でびっくりしました。隊員と一緒に、いろいろな現場へ行きました。「目の前に、覚悟を持って、自分よりもほかの人を考えている日本人がいた。だから、我々は頑張れた。背中を押された」。
自衛隊の方が頑張れた根源です。

 隊員と一緒にある病院に行きました。院長先生の目は真っ赤です。1週間寝ていないのです。
院長に「何でそんなに頑張るのですか」と聞いたのです。

「佐藤さん、実は波が来たときに入院患者全員を屋上に上げようと思った。
でも、全員は無理だった。
その中に80過ぎのおばあちゃんがいました。
波がおばあちゃんをベットごとさらっていきました。
ベットの上でおばあちゃんが屋上の私を見て
『ありがとうございました』と言って波の中に消えていったんです。

佐藤さん、分かりますか。
『ありがとうございます』と言って波の中に消えていったんです。
私はあのおばあちゃんの姿、あの言葉、一生忘れることはできません。
だから、私は今、必死なんです。
自分の命があと1週間持てば誰かにバトンを渡すことができる。
でも、今、私しかいないのです。
誰がこの原発に近い病院に来ますか。
今、私しかいない。
自分が今、頑張らなければ、みんな亡くなってしまう。
自分なんかどうなったっていい」。


ものすごい覚悟が伝わってきました。
すごいな。俺たちはもっと頑張らなければいけないと思いました。


 4月の中旬に、宮城県のある浜に行きました。3歳くらいの男の子が見つからないと一所懸命探しているお母さまがいました。私が行ったときは見つかりませんでした。4月下旬に「見つかった」と連絡が来ました。もう4月下旬です。かなり傷んでいる。違うかもしれない。
 とても、そういう状態をお母さんに見せるわけにいかないので、毛布にくるんで、服だけ出して、お母さまに見せた。
そうしたら、お母さまは、その服を見て「間違いありません。自分の息子です」。泣きながら、子どもを抱いて、こう言ったそうです。

「よかったね。本当によかったね。
自衛隊さんが助けてくれたよ。本当によかったね。
今度生まれ変わったら、大きくなったら、自衛隊さんに入れてもらおうね。
そして、1人でも多くの命を救おうね」。


居合わせた隊員は、みんな号泣だったそうです。

 こういう状況になっても、自分よりもほかの人を考えている。まだまだ子どもが見つからなくて探しているお父さん、お母さんがいっぱいいます。
子どもに「生まれ変わって、自衛隊に入って助けてやれ」「すごいな。こういう日本人がいる。覚悟だな。自己犠牲だな。俺たち、もっと頑張らないといけないと思った」と言っていました。

 3月下旬に岩手の浜に行きました。がれき一面の中で子どもを探す親の姿、きょうだいを探す子どもの姿がありました。
10歳くらいの女の子が一所懸命がれきをめくりながら、思い出の品を探していました。手伝いました。会話の中で、何気なく言ってしまったのです。
「何か困っていることない。何か欲しいものない」。
そうしたら、その女の子は

「佐藤さん、お母さんが欲しい。お母さんが欲しい」

と急に泣き出してしまいました。しばらく女の子を抱いて、一緒に泣きました。
現場はこうだったのです。



がんばろう、東北。頑張って、福島、これは被災者はないという言葉でした。本当に自分の家が流されたり、身内が亡くなったら、頑張ろうというのは絶対に起きない。何で俺が、何で俺なんだ。備えが十分ではなかった。後悔しきれない。あれほど地震が来る、津波が来ると言われていたにもかかわらず、甘えがあった。
「備えあれば憂いなし」が、「憂いなければ備えなし」になっていた。去年大丈夫だから、今年、来年大丈夫だろうと思った。甘えがあった。これでは守れないのです。


 軍隊には合言葉があります。
プリペア・フォー・ザ・ワースト、ホープ・フォー・ザ・ベスト
("Prepare for the worst, Hope for the best")。
最悪に備えつつ、最善を追求しなさい。これが危機管理。ただ、そう言った福島の方々も、自衛隊の行動で勇気と希望をもらったと言っていました。
あの原発1号機、4号機がバンバン爆発した。いつ爆発するか分からないその原発の上を自衛隊のヘリコプターが飛んで放水をしてくれた。米軍はあんなことをやらない。米軍は約70キロ離れていました。

あの映像を見て、福島の方は思った。
「儲かるか、儲からないかではない。損か得ではない。自分の命を犠牲にしてでも守るべきものはあるんだ。俺たちも頑張らないといけない」。
やはりこのような自己犠牲が人の背中を押すのです。
これは我々の価値観なのです。苦しくなったときに、その軸が分かってしまう。何がその人の軸か。自分よりもほかの人。だから、そういうもの、自分の国は自分で守る。国家あっての地域だし、地域あっての家族。家族あっての地域。地域あっての国家。当たり前のこと。
 先人がまさに我々にこの日本を託されました。あの多くの犠牲の後、天皇陛下は、終戦のお言葉の中で、まさにこの再建のために大御心を固くし、忠義を厚くして、みんなで頑張ろうと仰った。
3.11のあの2年前の震災の後、天皇陛下がまさに国民が、被災地にみんな心を寄せて、心を一つにこの復興を頑張ろう。我々はその犠牲を無駄にしては絶対いけない。その思いをしっかりと後世につなげないといけない。未来の責任が我々にはあるのです。


10.植村眞久大尉の手紙

 今、私とたまたま同じ名前、「まさひさ」さんという、植村眞久・海軍大尉の娘さんに宛てた手紙を持ってきました。彼は大村基地から飛び立って、フィリピン沖で特攻死を遂げた、散華された海軍大尉です。読み上げます。
 娘さんの名前は素直の素と書いて「もとこ」といいます。


 素子

 素子は私の顔をよく見て笑ひましたよ。私の腕の中で眠りもしたし、また、お風呂に入つたこともありました。素子が大きくなつて私のことが知りたいときは、お前のお母さん、佳代伯母様に、私のことをよくお聴きなさい。私の写真帳もおまえのために家に残してあります。素子という名前は、私がつけたのです。素直な心のやさしい、思いやりの深い人になるようにと思つて、お父さまが考えたのです。

 私は、おまえが大きくなつて、立派な花嫁さんになつて、幸せになつたのを見届けたいのですが、もしおまえが私を見知らぬまま死んでしまつても決して悲しんではなりません。おまえが大きくなつて、父に会いたいときは九段へいらつしやい。そして、心に深く念ずれば、必ずお父さまのお顔がおまえの心の中に浮かびますよ。父は、おまえを幸せ者と思います。生まれながらにして父に生き写しだし、他の人々も「素子ちやんを見ると、眞久さんに会っているような気がする」と、よく申されていた。

 また、お前の伯父様、伯母様は、お前をただ一つの希望にして、お前をかわいがつてくださるし、お母さんも、ただ、ご自分の全生涯を賭けて、ただただ素子の幸せのみ念じて生き抜いてくださるのです。必ず、私に万一のことがあつても、親なしなどと思つてはなりません。
父は常に素子の身辺を守つています。やさしくて、人にかわいがられる人になつてください。おまえが大きくなつて、私のことを考え始めたときに、この便りを読んでもらいなさい。

 植村素子へ

 追伸 素子が生まれたとき、おもちやにしていた人形は、お父さんがいただいて、自分の飛行機にお守りにしております。だから、素子はお父さんと一緒にいたわけです。素子が知らずにいると、困りますから、教えてあげます。


 植村眞久・海軍大尉です。
 こういう先人たちの思い、我々は、まさに今、国難と言われているときに、東北の復興も、景気、経済も、領土問題も、危機管理もまさに心ひとつに、覚悟を持ってやらないといけない。
一人ひとりが自分たちのできることをやれば、この国難を必ず乗り越えられると私は思います。


11.最後に ~佐藤正久の想い 一燈照隅・萬燈照國~

 最後に、今日、私が皆さんに伝えたい言葉はこれです。
これは安岡(正篤)先生の言葉です。


一燈照隅 萬燈照國

一人ひとりの照らす提灯はひとつの隅しか照らすことができないが、国民みんなが提灯を照らせば、国を照らすことができる。
まさに今、我々が、一人ひとりが自分の小さな義務と責任を果たすことによって、国が栄えます。国難を乗り越えることができます。



天皇陛下が仰るように、国民が心一つになって、将来への責任、未来の責任を果たす。
これが今だと私は思います。

あの南三陸町の女性職員、遠藤さんのあの想い。
また、この植村眞久大尉の想い。
多くの犠牲を払って、今、我々が生きているわけです。
だから私は今年の靖國神社、春の例大祭で「防衛大臣政務官 佐藤正久」と記帳してまいりました。それが我々の義務だと思っています。

 今後とも皆さまとともに力を合わせて、この国、そしてこの埼玉を。また住むなら、この埼玉がいい、そして生まれ変わるなら、この日本がいい。こういう日本に皆さんとともにしてまいりましょう。今日はどうもありがとうございます。



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最後までお読み頂きありがとうございます。
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ブログ主 敬白

1 件のコメント:

  1. ありがとうございます。素晴らしい内容です!
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